土が“水のようになる”瞬間を見せよう!液状化が観察できる「エキジョッカー」(ナリカ)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
もし、あなたが立っているこの地面が、突然プリンのようにドロドロの液体に変わってしまったら…?地震のニュースで耳にする「液状化現象」。地面が液体になるなんて、まるでSF映画のようですが、これは現実に起こる恐ろしい現象です。しかし、教科書の説明だけでは「なぜ?」という一番大切な部分が、なかなかわかりにくいものです。
そこで今日は、このミステリアスな現象を、たった1本のボトルで解き明かす驚きの実験教材をご紹介します。さあ、あなたの机の上に、小さな地球を再現してみましょう!

液状化現象の実験
足元の下はどうなってる?ボトルの中に地球を再現!
今回ご紹介するのは、ナリカの教材「エキジョッカー(地盤液状化現象実験ボトル)」です。このユニークな名前のボトルが、私たちの足元で何が起こっているのかを見事に教えてくれます。
ボトルの中には、白色の粒と青色の粒とが水と一緒に入っています。これをよーく振ってしばらく置いておくだけで、まるで魔法のように、粒の大きいものが速く沈み、小さいものが後からゆっくりと降り積もっていきます。
あっという間に、ボトルの中に「地層」が完成しました。これだけでも、川の河口や湖の底で、どのように土砂が積もっていくのかがわかる、立派な科学実験です。しかし、「エキジョッカー」の真骨頂はここからです。
地震発生!ボトルを揺らして「液状化」を呼び起こせ!
地層が完成したら、いよいよ本番です。ボトルに「地震」の衝撃を与えてみましょう。
【実験手順】
- ボトルをしっかり振って、中の粒子を混ぜ合わせます。
- 机の上に置き、粒子が沈んで美しい地層ができるのを待ちます。(数分でできます)
- 地層ができたら、ボトルの側面を指でトントンと優しく、連続的に叩き続けます。これが「地震の揺れ」です!
さあ、中の地層はどうなるでしょうか?こちらの動画で衝撃の瞬間をご覧ください。
驚いたことに、叩き始めると、それまで安定していた地層が崩れ、中の砂がまるで沸騰したお湯のように舞い上がります。そして、上にあったはずの重りがゆっくりと沈んでいく…。これこそが、まさに液状化現象です。
なぜ地面は液体になる?見えない「水圧」の仕業
では、なぜただの振動で、固い地面が液体のようになってしまうのでしょうか?
秘密は、砂の粒子のすき間を満たしている「水」にあります。 普段、地面の中では砂の粒子同士ががっちりと組み合わさり、お互いを支え合って安定しています。建物の重さも、この粒子たちがしっかりと支えているのです。
ところが、地震の揺れが加わると、この粒子たちの結びつきが一瞬バラバラになります。その瞬間、逃げ場を失った水が、下から砂の粒子をものすごい力で押し上げます。これを専門用語で「間隙水圧(かんげきすいあつ)の上昇」と呼びます。
この水圧によって、砂の粒子は水の中にプカプカと浮いた状態になってしまいます。粒子同士の支え合いが失われた地面は、もはや固い地面ではなく、文字通り「砂と水の液体」と化してしまうのです。だから、重い建物は沈み、逆に地中にあったマンホールのような軽いものは浮き上がってくるのですね。
この教材一つで、粒子の大きさと水の通り道の関係、地層の構造、そして振動と水圧の変化という、いくつもの科学的な知識が一本の線でつながります。「なぜ大きい粒から沈むの?」「実際の地震でも同じことが起こるの?」そんな生徒たちの「なぜ?」が、深い学びに変わる瞬間です。ちょっとした振動で、科学への理解も大きく揺さぶってみませんか?この実験は、きっとあなたの防災意識にも、新たな視点を与えてくれるはずです。
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください! ・運営者・桑子研についてはこちら ・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら ・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!